日本内部統制研究学会
会長 川北 博
2007年12月


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2007年12月
会長挨拶

 経済のグローバル化が一層進展する現在において、証券資本市場における企業情報開示の透明性・信頼性を確保することは、我が国経済の持続的発展および成長のために不可欠の課題であると考えられます。
 しかしながら、2004年10月中旬以降発覚した、有価証券報告書における不実開示問題を始めとして、粉飾決算事件などが相次いで発覚するなど、我が国の企業会計あるいは監査制度を含む企業情報開示制度に対する国民の期待は大きく揺らいでおります。
 このような状況を打開するため、我が国におきましてもディスクロージャーの信頼性を確保する目的で、「財務報告に係る内部統制の重要性」が認識され始めたものと理解しております。
 そしていよいよ2008年4月1日より、金融商品取引法の規制の下、上場企業においては内部統制報告実務が開始されることとなりました。この制度化を予想して、この1、2年は内部統制をめぐる様々な議論がマスコミなどで取りざたされ、また様々な研究会やセミナーなどが開催されていたようです。しかしながら、そこでのほとんどは内部統制の何たるかということよりも、謂わば制度対応のための議論であるように見受けられます。企業に本来必要とされる、本質的な意味での内部統制の議論が欠けているのでは、というようなケースがあるように感じておりました。
 米国においては、SOX法で内部統制報告実務が法制化されるはるか以前より、COSOに代表される「産・学・士」による議論の積み重ねがあり、そこでは法律による要請ということではなく、企業に本来求められる内部統制の重要性が研究されておりました。SOX法は、それら議論をベースに作成されていることを再認識する必要があります。
 民間レベルでのこのような活動の重要性を感じる中で、当学会は、昨年12月8日に60人の有志を発起人として設立するに到りました。当学会は「産・学・士」からなるメンバーを構成員として、民間レベルでの内部統制の議論を積み重ねていき、その研究結果を基に、必要とされる内部統制の啓蒙活動を行っていくことを目的としています。
 そして2008年7月5日は、記念すべき第1回年次大会が、ここ青山学院大学で開催される運びとなりました。ここに至るまでに、鈴木豊準備委員長を始めとする大会準備委員の皆様には大変なご尽力を賜りましたこと、ここに厚く御礼を申し上げます。
 最後になりますが、当学会での初めての研究大会ともなるこの第1回年次大会では、学会の理念に沿った形での活発な議論が交わされ、また時宜にかなった研究成果がもたらされることを心よりご期待申し上げます。